編集者を驚かせたウラ話がザクザク☆『Sho-Comi』編集部座談会【後編】

雑誌の表紙のアイキャッチ

「絵はうまく描けてもなかなか面白い作品が描けない……」という人も多いだろう。そもそも、売れる漫画家になるための素質とはどのようなものか。多くのヒットメーカーを発掘してきた編集者だからこそわかる、売れる作家の傾向について語ってもらった。

 

編集者は喋る人。作家さんは……

 

――ずばり! 「売れる作家」ってどういう作家ですか?

 

萩原: うちの雑誌だとやっぱり、恋愛に興味がある人ですね。ちゃんと男の子に興味があって、恋愛に前向きである人が描くと作品は面白いんです。こんなもんでしょ? って描くと読者にばれちゃうわけですよ。だから本当に好きな男の子との実話を描きましたとなると、おお、面白いぞ!となる。

 

萩原さんの写真

 ▲編集長 萩原さん

 

金井: 色の合わせ方にセンスがあったりする作家さんは多いですね。それから、編集者はすごく喋るんだけど、作家さんは逆に寡黙で人をじっと見ていることが多い。「あの編集者さんってこういうタイプですよね」って初対面の編集者を見て後から言ってきたりするんですけど、ことごとく当たってる(笑)。

 

萩原: 人間観察が好きで洞察力が鋭い分、原稿を読んでいて、明らかに「あっ、このキャラってあの人?」となるときもあるし。以前もあがってきた原稿を読んでいたら、「あれ、この女の子のモデルって、佐々木じゃない?」って(笑)。

 

金井: そう!「このリアクションは佐々木だ!」ってすぐわかりましたよね。

 

佐々木: 私自身は全然気づかなくて、「このキャラいい子だなあ」と思って読んでました(笑)。

 

3人の写真
▲デスク 佐々木さん(一番左)と思われるキャラも登場したそう

 

萩原: 人をよく見ていて、リアルにキャラを描いてくるっていうのはいいですね。いっぱい人間ウォッチングをして、いろんなキャラが描けるようになってくれるとうれしい。

 

 

プロ意識が高い人は労をいとわない

 

――作家さんを見ていて「あ、すごいな」と思う瞬間はありますか。

 

金井: 『ハチミツにはつこい』が累計で200万部売れている水瀬藍先生かな。いま新連載を担当しているんですが、やっぱり200万部売れる人って違うな、って思うところがあります。たとえば、打ち合わせ時に「ここがちょっと物足りない、もっと男の子にドキドキしたい」とか「ここの気持ちがわかりづらくて、もっとここ知りたいんだけど」とか、私が読み手としてふわっとした感想を言うんです。そうすると、そんな私の漠然とした意見に、先生が「それって、ここの気持ちがわかりにくいからそう思ったんですかね」と答えるんです。私もそう言われて初めて「あ、そうです」って気づく(笑)。

 

金井さんの写真
▲作家さんの洞察力に驚かされるという、デスク金井さん

 

金井: そして、その後がすごいんですよ。『Sho-Comi』って隔週だから2週間に30ページくらいの原稿を書かなければならない過酷な現場なんですね。その間にもカラーのイラストを描いたり付録のカットを描いたりとか休みのないスケジュールなんですけど、そんな中で打ち合わせの翌日に出てきたネームが、昨日出したものと全然違うエピソードになっていて、断然わかりやすくなっている。昨日の打ち合わせのときに気になっていたところも解決されているし、全体としてもブラッシュアップされているんです。さらには、「もっともっと面白くできるんじゃないか悩んでます」と、追加でネームが送られてきたりして本当に驚きます。”プロ”なんですよ。できることは全部やる。プロ意識が高い人は労をいとわない。

 

 

――どんなに追い込まれていても自分を甘やかさない、と。

 

金井: ネームから下絵の間にも修正版が届いたりするんです。「見せ方変えました」って。いい意味でガツガツしてるんですよね。勝ち上がっていく人は貪欲なんだなあ、と感じますね。作家さんから教わることってすごく多いんですけど、こちらの意見もすごく素直に聞いてくれます。むしろ売れている人ほど聞いてくれるかもしれません。「求めすぎかもしれないけど、もっとこここうしてほしい」と伝えると、「あ、そうなんですね、わかりました」と、すぐに修正してくれる。こだわるけど、納得すればとても素直に対応してくださいますね。

 

萩原: 現在、『Sho-Comi』のトップ作家が池山田剛先生なんですけど、池山田先生は絶対に締め切りを守りますね。コミック累計で1600万部売れているトップの作家が締め切りを守るとなると、もう、他の人は言い訳のしようがない(笑)。そもそも締め切りを守れないと、プロになれないですね。面白いものを作るためには内容に悩むための時間を確保しなければならないですから。締め切りに追われていては無理なんですよ。

 

3人の写真
▲プロ作家の貪欲な努力により、作品はどんどん良くなっていくという

 

 

新人からプロ作家になる過程とは

 

――新人さんがデビューから本誌で連載をもつまでの過程ってどのような感じなんですか。

 

金井: 最近担当した先生だと、以前所属していた『ベツコミ』の加賀やっこ先生ですかね。デビューしたときは一般的な作風で描いていたんですけど、打ち合わせでよくよく話を聞いてみたら、すごくいい意味で「この人、とても変態だな?」って思う瞬間があって(笑)。

先生の語る「こういう男の子っていいですよね」っていう視点がとても独特な感性だと思ったんです。「じゃあ、もしかしたら読者に引かれるかもしれないけど、その変態性を前面に押し出した作品を読みきりで描いてみたら?」と提案したら、”生け花をする男の子が女の子を花に見立てて……”みたいな話ができあがって。

 

萩原: すごい変態なのきたね!(笑)

 

3人の写真
▲作家の個性に驚かされながらも、それがよい作品につながっていく

 

金井: 本人もすごく不安そうだったんですけど、作品を読んだら面白かったので、一回やってみようと思って。アンケートが悪かったらまた変えればいいし、「とりあえずこの路線でやってみよう」って励ましながら続けていたら、だんだんとアンケートも上がってきて。

そういう経験から、売れるために大切なことは「他の人と違うこと」かなと思うようになりました。漫画を描くのが上手い人っていっぱいいるわけじゃないですか。新人ってそこに食い込まなければならないんです。他の人と似たようなことをしていても埋もれちゃう。突拍子もないことをしろと言っているわけではないんですが、その人が本当にいいと思っていることとか、その人の個性、みんなは引くかもしれないけど私はいいと思っている、という部分を、ちゃんと読者に伝わるように描くってことが大切だと思います。

 

 

――なるほど、伝えるのが大切だと。

 

金井: 他の人にわからないように描いちゃうとただのひとりよがりですからね。加賀やっこ先生にも、「先生はこの描写だけで萌えられるかもしれないけど、私はまだよくわからない。だからわかるように描いてほしい」とお願いして、何度かネームを書き直してもらいました。直していくうちに「あ、加賀やっこ先生にとっては、こういうのが萌えなんですね」というのが私にもわかったんですね。そこからはどんどん作品が面白くなっていきましたね。次回作を待たれるようになったら、作家へのステップアップ完了……と言えるかもしれませんね。

 

 


▲『Sho-Comi』編集部の皆さま、貴重な現場の声をありがとうございました!

 

 

<インタビュー内に登場する作家紹介>

 

■水瀬藍
06年に『Sho-Comi』増刊号にて漫画家デビュー。純愛と初恋を描く作風で知られている。主な作品に『なみだうさぎ〜制服の片想い〜』『ハチミツにはつこい』 『センセイと私。』などがある。単行本累計部数 は『ハチミツにはつこい』は全12巻で200万部、『なみだうさぎ〜制服の片想い〜』は全10巻で100万部を超えている。

 

(公式ブログ)+うさぎと小鳥+
http://minaseai.blog75.fc2.com/

 

マンガ表紙

『ハチミツにはつこい』

 

 

■池山田剛

02年に『Sho-Comi』の前身である『少女コミック』で漫画家デビュー。主な作品に『好きです鈴木くん!!』(全18巻)『小林が可愛すぎてツライっ!!』(全15巻)などがある。デビュー1年ほどで『Sho-Comi』の看板作家となり、その突出した人気は今もなお続いている。16年1月より『世界は中島に恋をする!!』の連載を開始したばかりで、これまでの単行本累計発行部数は1600万部以上を誇る。

 

(公式ブログ)- 『池山田GO日記』池山田剛公式ブログ
http://ikeyamada-go.at.webry.info/

 

マンガ表紙

『世界は中島に恋をする!!』

 

 

■加賀やっこ

10年に漫画家としてデビュー。月刊誌『ベツコミ』にて活躍中。主な作品に弓道部を舞台とした恋愛を描く『一礼して、キス』のほか、『すごく、あかく、したい。』などがある。16年1月号より『ゆれるるる』を連載開始。

 

マンガ表紙

『一礼して、キス』

 

 

 

 

(制作:ナイル株式会社)
(執筆:園田 菜々)

 

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