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小学館「ちゃお」井上拓生編集長インタビュー②

『ちゃお』編集長インタビュー(2)

2002年に少女誌売上トップに上り詰め、以降少女誌トップ、漫画雑誌全体でもトップ10に少女誌で唯一ランクインし続ける(※)少女誌の女王『ちゃお』の編集長・井上拓生さん(2017年現在は『sho-comi』編集長)のインタビュー第2回(全4回)。※日本雑誌協会調べ

→小学館「ちゃお」井上拓生編集長インタビュー①へ

 

年齢を超えた感性を持っているのが編集者だと思います

 

-ちゃおにとってふろくとは、どんな存在ですか?

 

2つの大きな役割があります。

 

ひとつは、その作品をより好きになってもらうためです。

例えばDVDのふろくでちゃおの連載をアニメ化すれば、もっとその作品を好きになってもらえるかもしれないですよね。シールや文具などキャラの絵が入ったふろくも同じです。

 

もうひとつは雑誌を初めて手に取ってもらうためです。

ネイルセットやバッグ自体は、ちゃおのマンガとは直接関係ないですが、ネイルやバッグ目当てで買ってくれた子がちゃおを読んでみたら、マンガが好きになったということを狙っています。

 

 

-ひとつひとつの記事のキャッチコピーや煽りがみずみずしくキラキラしていてとても面白いです。ベテラン編集者や男性が考えたようには思えないです。実際はどうなんでしょうか?

 

そういった年齢や性別を超えた感性を持っているのが編集者だと思います

 

もし年齢=感性。年齢=素敵なキャッチコピーを書けるんだとしたら、ちゃおなら読者に年齢が一番近い新卒の女の子だけで固めて雑誌を作れば面白いものができるかといったらそういうわけではないですよね。

作家や編集者は、世代や性の違いを乗り越えて読者にアプローチしていかなければならないんです。

 

確かに若いからこそできる企画も絶対あると思いますが、逆にキャリアがあるからこそできる仕事があったり、書けるコピーがあったりもします。

 

 

-少女誌の編集さんと他の雑誌と違いはありますか?

 

正直、女性系雑誌しか経験がないのでわからないですけど、作家に対するアプローチは一緒だと思います。

今は少年誌、青年誌にも女性作家が増えているわけだし。

 

とにかく子供たちにマンガを描いて欲しい

 

-ちゃおにライバル誌はありますか?

 

やっぱり、『りぼん』と『なかよし』ですね。

 

それと、ジュニアファッション誌も大きなライバルだと思っています。

ちゃおを卒業した後に、ジュニアファッション雑誌に移る子が結構いますからね。

 

 

-ちゃお本誌の他に増刊の『ちゃおデラックス』(以降、デラックス)や『ちゃおデラックスホラー』とありますが、デラックスは新人のよみきりが多い印象です。

 

そうですね。ただ、デラックスの一番の柱は本誌連載陣の番外編です。さらにデラックスのシリーズ連載もあります。

なので、本誌の番外編、増刊のシリーズ連載、新人のよみきりという3段構成になります。

 

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-ちゃおの読者層はどのあたりですか?

 

基本的には平均年齢が10歳なので、小学4年生、5年生くらいですかね

読者層をグラフ化すれば、4、5年生を山にしてピラミッド型になっています。

 

 

-ちゃおのこれからの新しい取り組みは何かありますか?

 

小学生女子の中に生まれる新しい興味を追っかけていくことが、ちゃおの展開に繋がっていくので、彼女たち次第で僕らの仕事の方向性も変わるかもしれないですね。

だけど、小学生の本質的な興味って基本的には昔からそんなに変わらないですよ。

 

文房具が好きだったり、誰かを好きになる気持ちだったり、友達との人間関係だったり、生活の中での喜怒哀楽だったり。そういった感情は太古からさほど変わらないですよね。そこはある種、普遍的なものと思っています。

 

 

-ちゃおの新人賞はどんなものがありますか?

 

月例の「ちゃおまんがスクール」や年に2回の「小学館新人コミック大賞」、あとは最近始めた「ちゃお小学生・中学生まんがグランプリ」があります。

 

とにかく子供たちにマンガを描いて欲しいんですよね

だけど、マンガって高い技術もいるし、時間もかかるし、体力・集中力もいるし。というので子供たちがなかなか完成原稿を大人と同じレベルに仕上げるのは難しいと思うんです。

だったら、小学生は小学生レベルで、中学生は中学生レベルでマンガを見てみようって。

 

 

-今の小学生にも、マンガ描いている子はいるんですね。

 

そうですね。それに今は親御さんが子供がマンガを描くことに関して寛容になっているような気がします。

ちゃおネットショップ」という通販サイトがあるんですが、マンガの画材が詰まった「ちゃおまんが家プロフェッショナルセット」が大人気なんです。

 

もともと編集部にマンガの画材はどこで買えるのかという問い合わせが何件もありました。

確かにトーンとかって東京でも大きな画材屋さんでしか売ってないので、編集部で商品作ろうってなったんです。

これが、毎年クリスマスになるとものすごく売れるんですよ。

 

その流れの中で、今年の4月号のふろくで話題になった「究極まんが家セット」も出てきました。

絵を描くことは皆好きなんですよ。だけどひとつの作品を最後まで仕上げることが難しい。

 

最初は、なかなか高いハードルだと思いますが、年齢を経て地力をつけた時にちゃおに投稿してくれればうれしいです。

 

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▲『ちゃおまんが家プロフェッショナルセット』
スクリーントーンやホワイト、Gペンなど本格的な漫画家道具セットになっている。

 

申し訳ないですけど、不平等な競争ではあります

 

―ちゃおでよみきりを載せたり、連載を開始したりする際はどのように決めていますか?

 

まずちゃおでは、よみきり掲載、3回連載、6回連載、長期連載と、それぞれの段階で掲載して人気がある人を次のステップに進める形を取っています。

 

 

―トキワ荘プロジェクトの所属にも、何人かちゃおに掲載している人間がいますが、いつもコンペに勝ったり負けたりと、戦っている印象があります。

 

そうですね、各段階でコンペをして、面白い作品を掲載していきます。

月に2回編集会議があって、月の後半の編集会議がコンペ会議になってます。

 

それぞれ編集者が企画書を作って、作家さんの作ったプロットなどとともに会議に提出します。

ちゃおでは、各編集者がプロットを中心とした企画書にまとめてコンペします。

 

企画書の中には、キャラクター表やストーリーの山場のネームをつけたり、ネームを1話丸々つけてくる人もいます。

企画書は作家や編集者によってアプローチが違って、例えば、今のちゃおには赤ちゃんマンガがないと言う分析的な視点から、「狙い:ちゃおに必要なもの、それは赤ちゃん!」という企画が出たり、情熱系で、とにかく今自分が描きたい作品「狙い:ツンデレ男子との恋愛!」など人それぞれの企画書が出てきます。

 

 

企画書に「狙い」が必ず書いてあるんですね。(企画書の実物を見せていただきながら)

 

はい。みんなでこの企画書を読んで、それぞれ感想を述べあって自分の推す作品を1つずつ出して最終的に編集長の僕が決定しています。

推す作品は基本的に全員一致にはならないですね。「狙い」は、その作品を端的に表したアピールポイントです。

 

 

-編集長として、特別に推している作家がいたりもしますか?

 

もちろん。申し訳ないけど、そういう不平等な競争ではありますよね

 

だって実績出している作家とそうでない作家はまずスタートラインが違うわけだし。

でも面白いネタや切り口があったり人気のコンテンツとタイアップしたりすれば、そこで加点されます。

後は、その時の雑誌状況・ラインナップもみつつ掲載作品を判断したりしますね。

企画書はよみきりも3回連載も6回連載も同じような形で作っています。

 

 

-掲載にあたって、編集長枠はありますか?

 

最終決定をする以上、すべてが編集長枠だと思っています。

 

連載全体の何枠は、アンケート次第だけど、何枠は編集長の好みですということはないです。

もちろん自分の好みが入らないわけがないですけどね。結局、それが編集長としての雑誌のカラーですから。

 

 

-デラックスのコンペはユニークと聞きました。

 

作品の集め方が少し違っているのかもしれません。

今回は「最高のキスの約束」、第二特集に「泣けるほど純愛」があったんですが、デラックスのコンペより前に特集内容は決めてあります。

 

編集が作家にそのお題を与えて特集に沿った方が面白くなることも、与えないほうが面白くなることもあるので、特集に沿って自分がマンガを作るか作らないかは編集、作家判断です。

特集にエントリーする作家が少なければ、多少優遇されますし、逆にエントリーする作家が多すぎれば、特集枠多すぎということになるので…こればっかりは賭けですね。

 

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▲ちゃおデラックス2016年1月号

 

インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、福間、大橋

※本記事は、マンナビ「編集長の部屋」から特別掲載しています。

 

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