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ファンタジー=空想ではマンガ家失格?世界観を作りこむために必要なこと

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突然ですが、あなたはどんな話が好きですか?ドラゴンを倒しに行く王道ファンタジー?それとも戦国・幕末もの?学園ラブコメも捨てがたいですよね。こういった作品を魅力的に作りこむには、「世界観の設定」が必要です。今回は「世界観の作り方」について考えてみましょう。

 

 

「ファンタジーって、結局のところ空想でしょ?」
と、思ったならチョット待った!
 

ファンタジーは確かに現実とは異なる空想の世界です。しかし、その空想に人間(キャラクター)を住まわせ生活させるには、細かい設定を考えなければなりません。

 

ファンタジーの絵

 

世界観の緻密さが際立った作品として『D.Gray-man』(漫画:星野桂/集英社)が挙げられます。
これは「仮想19世紀末」を舞台とし、AKUMAとエクソシスト達の戦いを描いた作品です。AKUMAやエクソシストにもそれぞれ細かい設定が組み込まれており、その重厚な世界観はファンを魅了する1つのポイントとなっています。
星野氏は、『D.Gray-man』の世界を組み立てた方法について、次のように語っています。

 

“主人公からではなくさかのぼるようにしてそれぞれの設定を作っていきました。最初に『AKUMA』というネタが浮かんでいたので、じゃあ主人公はどうして『AKUMA』と戦うのか、どういう背景を持った人なのかを決める。次は『AKUMA』を倒すことのできる唯一の物質があるとして、と『イノセンス』を考え出した。”

(『マンガ脳の鍛えかた』より/集英社)

 

 

なるほど。1つのキーワードを基点とし、理由や因果関係を考えながら設定を作り上げていくことで、『D.Gray-man』の細密な世界観は構築されているようです。マンガを描くとき、つい主人公やヒロインの設定から考えそうになりますが、そうではなく周辺の設定から考えるというやり方もあるのですね。

 

キーワードを整理した絵

 

プロの世界は小物にまでこだわる

『D.Gray-man』はヨーロッパ風の、しかし実際の場所としてはどことも言いがたい場所や建造物が描かれています。
星野氏は部屋の描き方について、リアルに見えるように工夫していると言います。

 

“ファンタジーなので読んでいる人が楽しめるように、意識して描き込むようにはしています。だからといって複雑な形の彫刻を置くとか、床にすごい模様があるとか、そういうところを細かく描き込みたいわけではないんです。あくまで臨場感を出すための描き込みであって絵に凝りたいわけではない。”

(『マンガ脳の鍛えかた』より/集英社)

 

 

光と影の入り方や、小道具の配置、刀のツバなど、細部の細部までこだわりながら「リアリティ」を追求する星野氏。海外の建物についてはテレビの映像を見たり、アシスタントさんが旅行に行った際に写真を撮ってもらったりして、リアルなものを作品に取り込んでいるようです。
こういった地道な取り組みが、『D.Gray-man』の世界に一層奥行きを与え、読者を引きつけるものにしているのですね。

 

 

世界観を創ることは一個の国を創ることと考えるべし

特にファンタジーの場合、作家自身や読者自身が暮らす世界とは全く異なる世界が舞台となる場合があります。その際、心構えとして1つ役立つのは「一個の国を創る」という考え方です。
旧約聖書では神が7日の間に色々なものを創り、土をこねくり回して人間を創っていました。日本の古事記もまた、神が海や陸を創ります。

 

世界観を作る図

 

 

まさかいきなり宇宙を創るような想像は難しいかもしれないので、閉鎖された1つの箱の中を想像してみましょう。
そこに地形を創り、海や川を創り、人間の住む村や国を創ります。さて、その人間達は一体どんな生活をしているでしょうか。
衣食住の様式や、道徳観、法律、宗教など、人間が住んでいる世界には社会的・文化的な特色が生まれてきます。
 

世界観を想像する場合、どうしても特殊な設定に目がいきがちですが、その土台となる社会や文化の方向性を考えることで、まるで人間が本当に住んでいるような世界を創り出すことができるのです。

 

「ストーリーに合うサイズ」の世界観が大事

「じゃ、細かく細かく設定を作っていけばいいのね!」と単純に思ってはいけません。
細かく考えた結果、設定が増えすぎて収集がつかなくなってしまうことがあります。

 

設定は、あくまで世界を創るためのもの。「設定が増えたな」と思ったら、縮小することも考えましょう。

 

ゴミ箱の絵

 

 

設定を欲張って、あれもこれもと要素を増やすと、読者がついて来られなくなってしまいますし、あまりに複雑な設定は、それ自体に引きずられてスムーズに物語が進まなくなる要因にもなります。自分の扱える範囲内で、物語の邪魔にならない程度に設定をつくることをオススメします。

 

また細かいところにとらわれすぎれば、設定だけ考えるだけで満足してしまうこともありますので、自分の描きたい物語やテーマが決まっているのであれば、その物語が十分描ける程度の設定がそろった時点で創作を開始してしまうのも一手です。

 

さいごに

さて、ファンタジーを中心に、世界観の作り方について解説しましたが、いかがだったでしょうか? 歴史ものでも、SFでも、同じように世界観の構築は重要です。

 

マンガを読む際も、ストーリーだけパパッと読まずに、時代設定や登場する建物の内装などに着目して読んでみると、マンガをより一層楽しむことができるでしょう。

 

(制作:ナイル株式会社)
(執筆:哀川 空)
(イラスト:ゆうこ)

 

 

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