【水の表現】デジタルイラストの背景の描き方

水の描き方、網状模様

イラストやマンガなど、プールや海辺など水辺の背景によく登場する水の表現といえば「網状模様」ですが、なんとなく描いてしまっている方はご注意ください! 水面だと思っていたこの模様が実は違っているかも…!? 水の網状模様が誰でも簡単に描ける方法を、出雲寺ぜんすけさんが解説します。

はじめに

 

イラストなどで水の表現としてパッと思い浮かぶのが、この作例の網状の模様ではないかと思います。
しかし、水を描くときにいつでもこの模様を描いておけばよいというわけではありません。

この模様の描き方と、そもそもこの模様はいったい何なのかを解説します。

 

minamo_00

 

01 水の模様を描く

 

❶ 適当に曲線を描いて楕円形に繋げて描きます。

正確な楕円である必要はなく、ウネウネした線で適当にブロック分けされていればOKです。

minamo2_1

 

❷ 最初に描いた周囲に追加していきます。

minamo2_2

 

❸フリーハンドでさらにウネウネっとブロックを追加していきます。

minamo2_3

 

❹ 大きすぎるところは分割し、さらに外側に追加します。

minamo2_4

 

02 水の模様の細部を描き込む

 

01 ではおおまかな流れを解説しましたので、ここでは細部について解説していきます。

 

❶鋭角箇所

ブロック分けを適当にしただけの状態だと、鋭い角があって曲線になっていない箇所があります。

 

minamo3_1

 

 

❷ 鋭角部分に曲線を足し、鋭い角も曲線で構成されるようにしていきます。

 

miamo3_2

 

❸角を白く塗りつぶします。

minamo3_3

 

 

?曲線部分の分割

塗りつぶした白い部分があまり大きくなりすぎると変に目立ってしまいますので、穴を開けて分割するとよいでしょう。

 

minamo3_a

 

 

03 水の模様の線を調整する

 

線は均一の太さで描く必要はなく、むしろ細くなったり消えたりしているところがあったほうが見栄えがよくなります。

消しゴムツール]で削って形を整えます。

 

minamo_4

 

 

04 集光模様(コースティクス)とは

 

ここからは03 までで解説した水模様が、いったい何を描いているのかを考えていきます。
光がガラスや水の曲面で、鋭く反射、屈折してレンズのように集められると、光の模様ができます。

これを集光模様(コースティクス)と呼びます。

 

 

グラスやガラス玉の集光模様の写真

光がガラスの曲面で、鋭く反射、屈折してレンズのように集められて光の模様ができる

minamo5_1

 

海の集光模様の写真

水でもガラス同様に光の模様ができる

minamo5_2

 

 

05 集光模様は水面ではなく水底にできる

 

04 のグラスの写真からもわかるように集光模様はグラスの表面ではなく、グラスを透けた光がテーブルに当たったところにできている模様です。

 

すなわち水で考えると、水面ではなく水を通った光が水底に作った模様ということになります。
しかし、イラストでは水面の表現として?のように描かれるのを見たことがあるのではないでしょうか?

 

minamo6_b

 

?の場合、箱と水の境界のハイライトと模様が繋がっていて、あきらかに水面として描かれています。
このような絵を見かけていたため、筆者も以前は?のように波で高くなり細くなったところでの光の反射によるハイライトが描かれているものかと漠然と考えていました。

 

minamo6_c

 

しかし、水の模様を集光模様と考えるのであれば話は変わります。

 

集光模様は曲面による屈折や反射によって光が集められてできる模様です。

?のように反射の集光模様は壁などの面にできる模様となり、屈折の集光模様は水底にできる模様ということになります。
集光模様は水面にはできないのです。

 

minamo6_d

 

 

06 集光模様の見える視線の角度

 

集光模様が水面ではなく水底の模様だということは、集光模様が見えるためには

底が見える水深で俯瞰など水底の見える視線の角度」である必要がでてきます。

 

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すなわち、水深が浅くて俯瞰の絵では集光模様が見えやすく、水深が深くて横から見たような絵では見えにくいのです。

 

 

07 離れた位置にできる集光模様は繋がらない

 

集光模様は水底の模様であるということは、例えば人物が水に浸かっている状態を描く場合では、腕などにできる集光模様と水底にできる集光模様は距離が違うためつながらないということです。

 

模様がつながっているので、水面の表現として描かれている

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模様がつながっていないので水底と側面の表現として描かれている

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解説の都合でこの図では消していませんが、本来ならこの立方体の影になる部分は光がさえぎられるので、立方体の落影の部分にある水底の集光模様は描かないほうがよいでしょう。

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08 水の模様と波紋を描くときの注意点

 

水底なのか水面なのかといったことを考えずにただ水の模様をテクスチャのように貼り付けておきさえすればよいと考えて描くと、違和感のある絵になってしまいます。ここでは矛盾のある例を紹介します。

 

下図のNG例では模様が箱の側面と水底で分かれてないので、水の模様を水面にあるものとして描いていることがわかります。

しかし、波紋という水面の表現は水面の模様に影響を与えずに描いてあります。

 

水の模様と波紋を同時に使いたいのであれば、模様は水底として描く必要があるのです。

 

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▲水面の模様と水面の波紋がそれぞれを無視して同時に描かれている

 

 

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▲模様が水底として描かれているので水面の波紋と矛盾しない

 

09 水の模様と水面の明暗の注意点

 

水面の明るい箇所と暗い箇所では水面の波による角度の違いがあるはずですが、

NG例では水面にある模様が完全な平面に描かれたようになっているので違和感があります。

 

水底の集光模様として描かれていれば水面の凹凸との矛盾はありません。

 

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▲水面の模様が水面の凹凸を無視している

 

minamo10_ok

▲水の模様が水底として描かれているので水面の凹凸と矛盾しない

 

 

10 水の模様は集光模様なのか泡なのか

 

ここまで水の模様は集光模様であるとして解説してきました。

 

しかし、それでは?のような水面にある模様として描いてある絵が説明できません。
これは集光模様と同じ描き方ですが、光の模様ではなく水面に浮かぶ泡を描いていると考えるとつじつまが合います。

水の模様と同じ形の落影ができるのも納得です。

 

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▲水面に模様があり、影が落ちているのでこの模様は泡

 

水の模様はテンプレ的な記号のように使われているので、描いている人もそれが集光模様なのか泡なのかを意識せずに描いていることもあるのではないかと思いますが、悩んだときには「水底に描く場合は集光模様、水面に描く場合は泡」と意識するとよいでしょう。

 

 

11 泡の影で水深を表現する

 

水面の泡とその落影を入れることで水底までの深さを表現できます。

 

やり方は水面の泡レイヤーを複製して色を暗く変えてズラすだけです。

水面の泡から落影をずらす距離によって水深が表現できます。

近いほど浅く、離れるほど深くなります。

 

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▲泡から影までが近いと水深は浅い

 

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▲泡から影までが遠いと水深は深い

 

※本記事は、『デジタルイラストの「背景」描き方事典 Photoshopで描く! シーンを彩る風景・アイテム46』(出雲寺ぜんすけ著/SBクリエイティブ刊)からの特別版抜粋記事です。

 

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『デジタルイラストの「背景」描き方事典 Photoshopで描く! シーンを彩る風景・アイテム46』

 

 

作者プロフィール:出雲寺ぜんすけ

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