構図や配色で物語を伝える!ゴシック調イラストで学ぶ基礎講座

構図や配色で物語を伝える!ゴシック調イラストで学ぶ基礎講座

優れた構図、色彩などイラストレーションの基礎知識は、ジャンルを問わず活用できる重要な財産になります。見た人に深く印象を与えるイラストにするために、具体的にはどのようなことを意識するといいのでしょうか?アーティストのAbigail Larsonさんが、自らのアートワークを題材にして解説します。

1.はじめに

 

素晴らしいイラストレーションは独自のスタイルに加えて、優れた構成、よい形状、様式、色合い、そして価値を備えているものです。

これら各要素の役割を理解することで、絵を見る人の心に長く残り、作者の思いが伝わるような作品を作れるようになります。

 

この講座では、これらの要素の作品への活かし方、組み込み方を紹介します。

 

 

 

2.イラストレーションのテーマ:何をどんなスタイルで描くか?

 

最初に、メインキャラクターやディテールや背景に何を描くか、描きたい対象を決めます。

私はヴィクトリア朝時代のゴシック様式が好きなので、廃墟となった門を通り抜ける幽霊のような女性を描くことにします。

門の上では小さな怪物が腰を下ろし、彼女を見下ろしています。

 

 

3.アイデア出し:独自のやり方でアイデアを可視化する

 

制作の準備として、簡単なスケッチを始めます。

 

人間、モンスター、動物、いずれを描くにしても、モチーフの身体構造、動き方を理解することが重要です。

身体構造と動き方を理解しておけば、作品のアイデア出し段階で必要になった際に、すぐに違う姿勢のキャラクターを描くことができます。

 

スケッチではイラスト内の導線を考えることも重要です。絵を見る人が細部に見入り、作品世界に没入するためには、見る人の目が絵の上でどう動くかを考えなければいけないからです。

 

また、たとえ静かな場面を描くとしても、止まった印象を与えてはいけません。

たとえば歩く人物を見せる場合、真下にではなく斜めに横切って落ちる葉っぱと組み合わせるというシンプルなやり方で、絵に動きを付けることができます。

 

 

4.リサーチ:発想の源となる参考資料を集める

 

アイデア出し段階で、アーチ道の廃墟、メインモチーフに着せる派手なガウンなど、作品のディテールを作り込むためのリサーチも行います。

 

自分の作品を通して観賞者の中に喚起したい印象と同じ印象を感じる画像も探します。

私は暗く、ゴシック風で、ファンタジーなスタイルが好みなので、ドラマチックな衣服やエレガントなポーズは大変重要です。

 

また、私はアーサー・ラッカムエドマンド・デュラックヨン・バウエルイダ・レントール・アウスウェイトなど「イラストレーションの黄金時代」のアーティストからの影響を受けています。

おとぎ話から出てきた魔女や怪物といった、ほの暗いテーマを描くときの彼らの遊び心や上品さが好きです。

 

 

5.下書き:それぞれの要素の形を把握し、物語の伝達に果たす役割を理解する

 

作品に使うモチーフを個別に下書きしていきます。満足する形に達するまで、変化を加えながらいくつものバリエーションで描き出します。

 

 

6.スケッチ:完成に至る第一歩

 

スケッチの最終段階では、構成した画面の中にキャラクターをざっくり置き、衣装や顔そして背景のディテールをじっくり描き込んでいきます。

 

私のスタイルには強い癖がありますが、それはダークでゴシックな雰囲気を演出するのに役立っています。

また、たっぷりと垂れ下がった布が地面を引きずるのも私のお気に入りです。

 

 

7.質感と明暗:線画、水彩、グレースケールで明暗の調整

 

構成が済んだらペン入れをして、質感と陰影を出すために水彩絵の具で下塗りをします。

私は普段、水で薄めた黒色の絵の具を塗り、画面全体を灰色にするようにしています。

 

それが乾いたらスキャンしてPCに取り込み、着色に向けてデジタルで色の明暗を編集します。

グレースケールの段階で色の明暗を調整しておけば、後にコントラストを出そうと思った際に役立ちます。

 

 

8.色:配色を決める

 

デジタルソフト上で、選択範囲ツール、[色相・彩度・明度]、[カラーバランス]、[レベル補正]などの色調補正機能などを用い、最終的な配色を決めていきます。

 

色選びと着色には時間を掛けるようにしています。

画面の中のいくつかの要素は彩度の低い色で後景に追いやり、その他のものは黒色や、よりリッチな色で前景に押し出すようにします。

 

さらに、私は画面の中のいくつかの目立たせたい部分に深紅やオリーブグリーン、サビたオレンジ色などのスポットカラーを置くようにしています。

これらの色が持つ秋のような「ヴィンテージ」感が好きだからです。

 

 

9.完成

 

制作の最終段階ではレイヤーを統合し、デジタルソフトの色調補正機能の[色相・彩度・明度]や[カラーバランス]を使って色の微調整を行い、[レベル補正]で明暗を調整します。

そして仕上げにコントラストを上げ、顔や身体上のサインなどのメインモチーフを強調します。

 

 

10.おわりに

 

私は黄金時代やヴィクトリア朝時代のイラストレーションに大きく影響を受けていますが、私の作品はむしろファンタジーのジャンルに含まれるでしょう。

なぜなら、私は非現実的なテーマの探求を楽しんでいるからです。

 

モンスターやゴースト、ありとあらゆるファンタジーのクリーチャーが、私の作品のほぼすべてに出てきます。

私は彼らを暗いゴシックスタイルで描いてはいますが、彼らのユーモラスな、またはロマンチックな側面こそを私は表現したいと思っています。

 

 

 

Abigail Larson

www.abigaillarson.com

 

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